こんにちは、しゃんはいさくらです。
皆さんは「農家楽」(农家乐/nóngjiālè/ノン2ジアー1ラー4)という言葉をご存知ですか?
私はこれまでいろいろな农家乐に出かけていますが、先日友人と一緒に遊びに出かけた村はとても興味深く、いろいろと考えさせられることがありました。
今日は、常識にとらわれない姿や、村民をまとめる力を感じたある村をヒントに、過疎地域の町おこしについて考えてみようと思います。
都会人に大人気!“农家乐”って何?
“农家乐”とは、都会生活をしている人たちに人気の、農村生活が体験できる遊びの総称です。
英語ではagriculture(農業)とentertainment(娯楽)を足して、agritainmentと言うそうです。
农家乐にもいろいろあって、単に田舎料理(農村で採れた新鮮食材を使った家庭料理)を食べるだけのもの、田舎料理+〇〇摘み(果物や野菜など)が体験できるもの、田舎料理+宿泊に近所の観光地巡りを付けたツアーなど楽しみ方は様々です。
上海の旅行社が日本人向けに販売しているベジタベファームの野菜摘み体験+BBQツアーなんかはまさに农家乐ですね。
上海近郊で楽しむなら?
上海からですと、近郊の青浦、松江、奉賢(ベジタベさんは奉賢にあります)や崇明島が比較的行きやすい“农家乐”スポットです。
ウチのお義母さん世代(60-70歳くらいの中国団塊シニア)の人たちはこの近郊农家乐ツアーが大好き。同級生や元同僚たちを募ってバスを貸し切っては、天気の良い週末に出かけています。
日帰りのこともあれば、泊まりのことも。農家の一室で雀卓を囲み、夜遅くまでワイワイガヤガヤとマージャンするのがとっても楽しいんだそうです。
上海在住ファミリーに人気の浙江省
もうちょっと足を伸ばして遠出するなら、浙江省がオススメです。我が家は時折ハイキングや农家乐に出かけていますが、行き先はもっぱら浙江省が多いですね。
上海から4~5時間で行けることや山が多くてより自然に触れやすい点が気に入っています。先日出かけたのも、浙江省の台州近郊にある村でした。
まさかここでマリオに会えるなんて!
先日の記事といいなぜかマリオ繋がりなのですが、この村に足を踏み入れて間もないお宅の壁に、こんな絵が。
なんと初代スーマリが描かれていたのです。超ファミコン世代の私、一気にテンションUP↑↑!!
旅行に行く前の資料に“涂鸦村”って書いてあって、何だかよくわからなかったんですが、これのことだったのかと納得。
そう、この村、建物1つ1つに「らくがき」が施されていて、ちょっとした観光スポットになっているんです。
「らくがき」で貧困脱出!?
この村、正式な地名は天台県金満坑村といい、山奥の僻地にある限界集落です。
いつ頃描かれたものなのか解りませんが、ある芸術家が村の建物に残した「らくがき」をきっかけに、徐々に世に知れ渡るようになったのだそうです。
この壁画たちの可能性に賭けたのでしょうか、村の弁公室が地元の旅行サイトなどに積極的に働きかけて村のらくがきをアピール、2015年には情報サイトや新聞に取り上げられるようになり、その名が徐々に全国に広まっていったのでした。
その後この村は「らくがき村(涂鸦村/túyācūn)」と呼ばれるようになり、上海近郊在住者であれば、百度地図で“涂鸦村”と入力するとこの村がヒットします。
貧困に悩む村が、観光スポットに成長したんですね。
こんな「らくがき」があなたをお出迎え!
いくつかの「らくがき」を写真に収めましたので、一部を紹介したいと思います。私、写真撮影が上手じゃないので構図その他についてはご容赦くださいませ。
この村一押し(!?)の創作らくがき「明日への扉」(私の勝手な命名です笑)。
電線がなかったらもっとサイコー!なクマの口
千と千尋に出てくるカオナシ
これなら渡っても怖くない(!?)ハシゴのらくがき
子どもに嬉しいらくがき体験コーナー
村を奥まで歩いていくと、アニメのキャラクターが描かれた壁が連なっている場所があり、その中に入ると内側の壁にらくがきが体験できるようになっていました。
文字に書かれているとおり、体験料は無料です。
↓中の様子
5色の塗料と筆が貸してもらえて、好きに絵を描くことができます。私も何か描きたいなぁと思っていろいろ考えたのですが、コレといった気の利いたイラストが思い浮かばず。とりあえず新年のあいさつを書いてみました。
こういう時にみんなが「わあ!」と驚くような絵を描いてみたいもんですね。私って、ホント想像力や発想力がないんだなとため息が出ちゃいます。。。
子どもたちはテストで100点取る!とかそんなこと書いてる子もいたな。期末テストの2週間前くらいだったので、テストのことが気にかかってたんじゃないかと思いますが。
こんな奥地でも中共の力量を感じた
この日、寒さのせいなのか、ケータイ老朽化のせいなのか、電池残量が70%あったのに途中で電源が落ちてしまい肝心な写真が撮れなかったのですが、らくがき体験コーナーの近くに中共のシンボルマークが印字された平屋の白い建物が建っていました。たぶん村の弁公室です。
このマーク、とっても目立ってて「中共ここにあり!」と存在感をアピールしているかのようでした。その他にも村の共産党員の顔写真が所々に貼られていて、その写真には「〇〇(党員名)の管轄範囲:〇〇から〇〇まで」と書かれ、党員それぞれに管理責任が与えられていました。
おそらくこの村はらくがきを通じて有名になったことで、他のエリアから党関連の視察チームを数々受け入れしてきたのでしょう。
なんか、ウチの会社みたいな対応してて、中共ってどこに行ってもこうなんだなと笑ってしまいました。
ある意味、こんな僻地でもきちんと管理できるのは中共という組織が機能しているからこそとも言えますね。
日本の農村もできることがある
この村はちょっとした偶然と自分の努力で貧困から観光地に変貌した稀なケースと言えるでしょう。日本でも過疎化とか限界集落などの言葉が聞かれますが、そういう場所を救済する方法として地域一体を観光地化するのは有効な手段の1つだと思います。
「らくがき」という悪いことと思われがちな行為も、ちょっと視点を変えるだけでアピールできる材料になります。村おこしを思いついた当時の村の責任者の発想力や勇気に拍手を送りたい気持ちです。
日本の農村にもアピールできる材料がきっとたくさんあるはずです。緑に囲まれた自然いっぱいの山や海に囲まれた町、共に都市部に生活している人に対して非日常の体験を提供できるステキな場所だと思います。
日本も中国も、今後の農村エリアはますます過疎化が進み、何らかの手を打たないと生活の維持すら困難になります。
今回行った「らくがき」村も、観光地になって収入は向上したけれど観光客の相手をしているのは腰の曲がったおじいちゃん、おばあちゃんばかりで、我々の年代の人はほとんど見かけませんでした。
観光地になっても限界集落であることに変わりはなく、今後どのように観光地で居続けるかを考えないと、また貧困村に戻りかねません。
最後に
私の友人は何を通じてこの村の存在を知ったのかは解りませんが、今回この村を訪れることができて良かったです。
もし日本にこんな村があったらどうなんだろう?画家の卵たちの溜まり場になるのかしら?日本の農村も村民の誰かがリーダーシップを取り、村にある「何か」を発掘して、長期的な視点で町おこしを進めれたらいいのになぁ。
この村を訪れてそんなことを思いました。
中国への旅行はこちらのサイトが強いです。

