この記事を読んでくださっている皆さまの多くは、仕事や生活で日常的に中国人と関わっていることと思いますが、お付き合いする中で相手の言動に対して疑問に思ったり理解できなかったりしたことはありませんか?
外国人のことが理解できないとどうしても語学力の方に意識が行きがちですが、実はそうでもありません。
文化や根本にある考え方が違う為に、語学力があっても自分の想いが相手に伝わらず、やきもきすることがたくさんあります。
外見は似ていても、その行動や思想が全く異なるのが日本人と中国人ですよね。
ということで、今日は私が日々感じている悶々とした思いを文字で的確に解説してくれた専門家のご紹介と、先日実際に身をもって体験した日本人と中国人のモノサシの違いについて書いてみたいと思います。
きっかけはNBOnline
まずは専門家のご紹介から。
私がこの方を知ったのは、2年ほど前に読んだこちらの記事がきっかけでした。
「列に割り込む中国人は怒られたらどうするか」
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/041100064/052100004/
この記事はBHCCパートナー/亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科の田中信彦さんが書かれたものです。
一時期日経ビジネスオンラインで『「スジ」の日本、「量」の中国』という連載を出していて、毎回記事を読むたびに、
「うゎー、ウチの会社のケースそのまんまだ」
とか
「私が納得できなかったことは相手にこういう考え方があったからなんだ」
など、いろいろと納得できる発見がありました。
例えば上記の文中に出てくる「割り込み」に関する中国人の心境を説明するくだりでは、「割り込み=ルール違反」ではなく、「自分への影響の大小」に力点が置かれていると説明されています。
日本人は往々にして「割り込みはルール違反だからNG」と反応するのに対して、中国人は「割り込みされて自分の順番がどれくらい遅くなるのか」に注目しているというのです。
思えば、もし私がチケットの順番待ちで割り込みされたら、割り込みをする行為そのものに腹が立って、自分の番が何分遅れるという計算はしないと思います。 これは今まで私の頭になかった新しい視点でした。
皆さんはどうですか?
※今でも過去記事が残っています。興味ある方は是非一読を。(中国からは要VPN)
日経BP社/日経ビジネス電子版著者一覧の田中さんのページです↓
https://business.nikkei.com/atcl/author/15/041600267/
日経ビジネスの記事は2年ほど前のものですが、今読んでも目からウロコだと感じて頂けると思います。いくら変化やスピードが速い上海であっても、そこに住む人の文化や考え方が数十年程度でガラッと変わることはないですからね。
田中氏に慰めてもらった気がした
当時、この連載を読む度に心が救われていました。
今まで感じていた相手の行動に対する「なんで?」「どうして?」の思いが、「うゎー、田中さんの記事、まんまじゃん」という発見に変わって、相手に対するネガティブな感情がシューっと収まってきたのです。
その後も記事を読んで何度かそういう経験を重ねるうちに「中国人、見ててオモロイな」と分析目線で見えるようになってきて、家でも会社でも街中でも思い立ったら中国人ウォッチング。
これまでの中国人に対するイライラが湧いて消え、また何かをきっかけにストレスに感じるの繰り返しが、最近はイライラなく落ち着いている感じです。
駐在さんのように日本の相手もしなきゃいけないお仕事の場合は、間に挟まれて別のイライラも出てくると思いますが、何も解らずに対応するのと、中国人の行動が読めた上で対応するのとは全然違うと思います。
当時田中氏の記事を読んでて、慰めてもらうと同時に次はどんな面白い事例が紹介されるのかしら?との期待もあり、毎回連載がアップされるのがとても楽しみでした。
ブログで紹介しようかなと思った矢先に連載が終了してしまい、日経ビジネスオンラインも改編があったので、紹介しそびれてしまいました。(それにしても先延ばしが過ぎますが・・・苦笑)
田中氏が伝える切り口とは?
さて、田中氏は「スジの日本、量の中国」を切り口にいろいろなケースを紹介、解説していますが、この「スジの日本、量の中国」とは何を言っているのでしょうか?
それは、上の割り込みの例でも書いたとおり、
「スジの日本」→「〇〇すべき」「こうあるべき」と考え、スジや道理が通っていることを重視する
「量の中国」→「こうあるべき」の前に、あるのかないのか、要るのか要らないのか、あるなら(要るなら)どれだけある(要る)のかを重視する
ことを指します。
日経ビジネスの連載や田中氏が出された本を読んで頂ければ、彼の思いや「スジの日本、量の中国」が何を意味しているのかが実例で示されているのでもっとわかって頂けると思いますが、今日は私の実例を元に、スジの日本(私)と量の中国(旦那)を説明してみたいと思います。
無料のはずの宅配BOXでお金を取るとは何事だ!? byしゃんさく
事の発端は宅配便です。
ある品物をちょっと急ぎで欲しかった私は、モノが配達されるのを今か今かと待っていたのですが、あるバイク便のお兄さんは不在かどうかを確認することもなく、私の許可を得ることなく、我が家から一番遠方にある宅配BOXにその荷物を入れてしまいました。
宅配BOXを開けるコードはショートメッセージで携帯に届いていたのですが、子どもたちの宿題チェックをし、早く寝かせる為にバタバタしていて携帯のメッセージに気づかず、それを見たのはもう夜10時を過ぎていたので、翌日でも間に合うしと思い、BOXに預けたままにしました。
そして翌日の午後、BOXに荷物を取りに向かいコードを入力するも、
「もう22時間も預かってるのよ。1元払ってちょ♪」
みたいなメッセージが出てきて、一向にBOXの扉が開かないではありませんか!?
何?このBOX!とこの時点で若干の怒りが沸いたのですが、自分の打ち間違えかと思い2度3度と試すも、やっぱり1元払えのメッセージが出てくるんです。
その時にバイク便のお兄さんか旦那に電話すれば良かったのでしょうが、その時はとにかく荷物を早く手にしたかったので仕方なくQRコードをスキャンし、1元支払って荷物を取り出しました。
この時点ではまだ私の中の「べき論」はそれほど台頭していませんでした。
でもその帰り道、考えれば考えるほどやっぱりおかしいと思えてきて、荷物を手にした喜びよりも、怒りのボルテージがだんだんと上がってきました。
偉そうに22時間も預かってやったなんて表示は出るわ、こっちはBOXに入れてなんて一言も言ってないのに勝手に入れられて遠くまで取りにいかされるわ、しかも荷物出すのに1元払えと言われるわ。やっぱりあのBOXはおかしい、詐欺BOXだ、これはクレームだ!
スジが通ってないことに腹が立った日本人の私がムクムクと顔を出しました。
その後、家に戻りすぐさまバイク便のお兄さんにクレームを入れたら、1元なんて払わなくても荷物は取れるはずだと言うではありませんか?
はぁ!?
その言い方はもちろん、BOXに入れるのをOKしてないのに勝手に、しかも家から一番遠いBOXに入れたくせに、中国人あるあるの詫びがないばかりか、1元払わないで取らなきゃいいじゃないかまで言われて、詐欺BOXとバイク便男の両方に腹が立ち、それはそれは結構な剣幕で怒鳴りつけ、電話をブチ切りました。
怒りが全然収まらないので、その後アプリを通じてバイク便会社にクレームを入れたところ、数日後お客様センターから電話があり、「1元お返ししますのでアリペイの番号を教えてください」と。携帯番号を言って、無事1元を取り戻したという出来事でした。
たった1元の為にバイク便に目をつけられるは個人情報は流すわ、お前はアホか byしゃんさく夫
この出来事を家族に話したら、義母も旦那も目がテンになってました。
「なんだお前、たった1元の為にそこまでしたのか!?」って。
量の中国人からしたら、まぁこれが至極素直な反応なんでしょうね。それを言われて私は「やってまった!(岐阜弁でお願いします)これぞ、まさしくスジの日本と量の中国やわ」と気づきました。
旦那は、
・我が家の場所を知っているバイク便のお兄さんに悪態付くのは家に危険をもたらす行為である
・返金の為に、自分のアリペイ番号を他人に知らせるのは個人情報の垂れ流しに相当する
・お前は外国人でしかも女である
・たかが1元の為に取ったリスクが大きすぎる
あの時のねっちりとした口調をこの文章で表現できないのがすごく残念なのですが、イヤミっぽくあーだこーだと言われて、私は返す言葉がありませんでした。
ここまで言われればさすがに私でも解ります。私のスジなんて本当に些細でどうでも良かったことだと。
でも「べき論」で言わせてもらえば、
・許可なく宅配BOXにいれるべきではない
し、
・そもそも無料のはずの宅配BOXに1元支払う仕組みを導されているのがおかしい。払わなくても大丈夫なやり方が説明されておらず、人を騙す仕掛けになっている
・確かに払わないでも荷物が取れるBOXであるなら1元は返金すべきである
ですよね。
まぁ、これが50元100元の話なら、相手の対応も違っただろうし、私の怒りも中国人たちに理解してもらえたんでしょうけど、1元の話なのでね。。。ちょっと恥ずかしいです。。。
スジと量で心のバランスを
私のように中国人を家族に持ち、中国人が9割以上という会社で働いていると、一時も中国人と離れることはありません。正直言って味方は限られるし、辛い時があります。
そんな時はやはり、こういった「中国論」を勉強して心のバランスを保つことが大事かと思います。
いろんな「中国論」の中でも、田中氏の「スジの日本、量の中国」は身近な実例で解説してくれているので、とても解りやすいと思います。
なので皆さんも是非、仕事でしんどい時、アイさんとうまくいかない時などがあったら、「スジの日本、量の中国」を思い起こして乗り切ってみて下さい。
きっと心が軽くなりますよ♪
田中氏の著書はこちら↓
その他にも複数のサイト等に中国論を寄稿されてます。