
先日300回目の連載を迎えた日本経済新聞の連載小説『ワカタケル』。
日経小説は1年程度で変わっていくので、この物語もまもなく終わりを迎えることと思いますが、最近やっと興味が湧いてきたので、今日はその話をば。
読んでも読んでも心に入ってこなかった物語
最近でこそやっと面白いと思えてきて毎日読んでいますが、それまでは読んだり読まなかったりでした。
まぐわいの部分はそれなりに食いついて読んでましたが(みんなそうでしょ?笑)、意味がわかりにくい部分があると、そこは読み流して、また目を通して興味が湧いたところはしっかり読んで、を繰り返してきた感じです。
この小説、私には本当に難解で、何を描きたいお話なのかがずっと見えませんでした。国の起源と人間の本能が描かれているのは感じましたが、それ以上のモノが伝わってこなかったのです。
男性目線で書かれた、男性本位の場面があって、読んでてちょっとイラっとすることもあったし(男女不均衡は昔からあることだから仕方ないんだけど)、加えてカタカナの訳のわからない名前が余計に難解にしている面もあり、読んでいてあまり気分が乗りませんでした。
作者さんの説明文が掲載された
そう言えば、物語の途中で作者さんからのメッセージが掲載された日がありました。
日経はこの小説に対する好意的でない意見を多くの読者からもらっていたのではないかと勝手に推察しています。そうでなきゃ、作者が自分の作品に対する釈明文を出すことなんてあり得ないでしょ?
実際、その翌日からちょっと読みやすくなった印象があります。
例えば難解な登場人物のカタカナ名の後ろにカッコ書きで漢字が足されて、名前の意味が表現されるようになったことや、現代的な文章で物語が進むようになったり、女性の語り口調で進むところがあったり。
290回を超えて急に引き込まれる
7月1日付けの292回では、あらすじにこう書かれています。
宋に官位爵位を求め、海外展開を図る大王ワカタケルに不満を持つ大后ワカクサカ。大王を批判し始め、武力でなく霊力で國を支えようと決意する。
※日経小説第292回より
これを読んで、剣や弓に頼る男による力の統治から、神の声を聞き全てを味方にできる女による霊の統治に変わる過程が読めるのではないかと期待して俄然興味が湧いてきました。
物語では、大后は大王に楯突くようになり、遂には王位を譲るように迫ります。
頑張れ、ワカクサカ。
私も女。どんな時代、どんな物語でも女の頑張る姿は大好きよ。
ワカクサカ、死す。
この小説の中で鍵を握っている重要人物にヰトという女性がいます。
ヰトはワカクサカの分身とされ、かつて大王とも関係があった女性ですが、今は語り部として後世に伝える役目を担っています。
国力の衰退を心配しているワカクサカは、ヰトを呼び出して、2人で協力してワカタケルから王位を譲り受けようとします。
この過程で物語の重要登場人物である青い男を始末したのですが、その後、ワカタケルとワカクサカが王位を譲る譲らないでいさかいを起こし、その過程で大王は大后を斬ってしまい、ワカクサカは死んでしまいます。
現時点では、ヰトがワカクサカの後始末を仕切っているところまで物語が進んでいます。
ワカクサカを斬り、既に衰えが見え隠れするワカタケルの今後。
斬られたワカクサカは本当にこのまま無くなってしまうのか。
消えた忠犬カラノ。
語り部のはずがいつの間にか重要事項を仕切る役目になってしまったヰト。
今後物語がどう進んでいくのか、しばらく注目していきたいと思います。