さくらの独り言 子どもあれこれ

「双減」 ~出る杭を打つための政策~其の弐

2021-11-23

 

こんにちは、しゃんはいさくらです。

今日は「双減政策(中国版ゆとり教育)」の状況について、私たちに対するインパクトが大きかった校外学習(塾)規制について書いていきます。

 

個人的には、塾の規制≒学習負担軽減ではないことと、中国の社会問題を改めて認識した出来事でした。

思った以上の打撃だった「塾規制」

今年施行された政策で市場に結構なインパクトを与えたのは校外学習機構の規範化、つまり「学習塾規制」です。

 

政策施行後の現在、義務教育期の学生を対象にした学習塾は新規で登記することはできず、既存の学習塾も非営利機構として運営していかなければならなくなりました。

また、授業の内容にも批准が必要、学習塾が上場して資金融資を得ることは一切禁止、学習塾の運営時間にも大きな制限が加えられて、多くの学習機構が一気に経営難に陥りました。

 

業界人の生活が一変

この政策を受けて教育関連事業に携わっていた人たちは、当然ながらこれまでの生活が一変しました。

 

先生やアシスタントスタッフの多くが授業数削減などによる収入減に見舞われ、所属していた塾の状況によっては職を失ってしまった人も少なくなく、上海だけで3.5万人が失業したとの情報もあります。

 

今日のお話は、あくまでも我が家(上海郊外区)の周辺での話で、「私の身の回りで起こった出来事=上海のデフォルト」ではありませんが、上海だけでなく、もしかしたら中国のあちこちで同様のことが起こっているかも知れないので、気になったことをいくつか書いておきます。

 

学齢前幼児向け学習塾が一切禁止

塾規制の中でも特にインパクトが大きいと感じたのは、学齢前の子どもに対する塾(お遊び的なものも含め)の開講禁止です。

学齢前の子どもを対象にした内容は特に規制が厳しい

 

上海の例で言うと、外国人教師を囲んで英語で楽しく会話しましょう、歌を歌いましょう的な英会話教室がたくさんあったのですが、これがオンラインも含めて全て禁止になりました。

都会を中心に学齢前の子どもに対する教育熱は非常に高く、幼児向け英語教育のマーケットはかなり大きかったと思うのですが、それが一律禁止となったんですからこのインパクトたるや!!

 

一時期、英語教師は外国人がビザを取りやすい職業の1つとも言われてましたが、今や「先生要りません」の正反対な状況に。

 

数ヶ月前までは子どもたちの楽しそうな声で賑わっていたテナントの多くが、今や見るも無残な姿に変わり果ててしまい、しかもこれが中国全土に広がってる光景かと思うと、ここまでやるのかとこの政策の恐ろしさを感じずにはいられません。

かつては子どもやその親で賑やかだった通りが一変

 

今後少なくないビルが家賃収入減に悩むのは必至で、教育業界だけでなくその恩恵を受けていた周辺業界も徐々に体力を失っていくことと思います。

  

あぁ、お世話になった公文教室も・・・!!

熱心な指導が評判で、我が子たちが大変お世話になった近所の公文教室、先日近くを通ったので寄り道をして覗いてみたら、こちらも内装を取り払った跡の無残な姿に変わってしまってました。涙

 

日本での公文教室の位置づけは解りませんが、近所のローカル公文教室の位置づけは、「小学校の授業に入りやすくするために事前の積み上げをしておく」場所でした。

私の周囲では幼稚園中班(年中)くらいから公文式に通わせて簡単な計算の練習やピンインの事前学習をさせ、小学校に入ったらフェードアウトしていく人が多く、我が家みたいに小学校高学年まで続ける子なんて、5人もいなかったくらい。

 

だからこの政策が出た時に真っ先に気になったのがあの公文教室で、だって、規定の中で明確に「学齢前の学科系塾は厳禁」って書いてあって、正に対象年齢まんまだったから、教室を続けていけないんじゃないかと思ってて。

あの先生のことだからきっと他のコンテンツで頑張っていくとは思うんですが、徐々に拠点を広げてた最中だっただけに、この政策が出たことで事業も人生も一転してしまい、悔しさとか虚しさとか、先生の心中を思うと何とも言葉に尽くせません。

 

ネット授業は継続

上の子が中学生になったのをきっかけに我が子たちは公文教室からローカルの大手学習塾に切り替えました。

コロナ前までは上の子も下の子も週末に開講される少人数授業のクラスに通ってて、コロナ禍以降はそれがオンライン授業に切り替わったものの、引き続き週末に授業受ける形で続けていました。

その後夏休みの終わりにこの政策が出され、今秋から授業の開講日と時間が変わりました。

小学生はもちろん中学生も土日の授業が禁止されたので、全ての授業が月~金に埋め込まれることになり、宿題軽減策はあるものの、平日の負担が以前よりも増しました。

 

負担軽減政策が出たんだから、オンライン授業なんてやらせなくてもいいのに!と思われるかも知れませんが、いいえ、とんでもありません。

 

其の壱でも書いたとおり、大学入試制度、高校入試制度が変わらない以上、現在の教育品質では入試でふるい落とされる可能性が高いため(一説では上海で普通高校に入れるのは全生徒のたった半数とも)、課外授業で少しでも補って、ふるい落とされないようにしがみついていく必要があるのです。

  

みんなそれを解ってるから、評判のいい(勉強が厳しい)私立校に行ったり、海外の大学に行くことを念頭に、英語強化のためにインター校に行ったりという選択をするワケです。

 

我が家は様々な考慮の末に、地元の公立校に通わせるという選択をしたワケですが、現在は平日にカバーしきれない部分を週末に録画授業を観て補うことが常態化し、本末転倒というか、私たちの意にそぐわない形になってしまってます。

 

華東師範大学の家庭教師サービスが終了

経済的に厳しい学生の貴重な収入源でもあり、親側としても他の学習塾より安価に依頼できることで人気のあった華東師範大学の家庭教師サービスがこの夏、20数年の歴史に終止符を打ちました。

家庭教師センターの通知

 

月~金だったらいいんじゃないの?

とか

ここがなくなったらどこに家庭教師を頼めばいいの!?

など、公式アカウントのコメントには閉鎖を惜しむ声がたくさんあがってました。

 

大学は政府(党)に支配されている場所だから仕方ないんでしょうけど、国務院からの通達を受けてちょっと過敏に対応している感は否めません。

 

家庭教師ができなくなって辛い学生生活を強いられるかも知れない学生の気持ちを思うと、あぁ、こんなところにも政策の余波が・・・と思ってしまいますね。

 

学習塾の先生が我が家の階下で…

火事のリスクが高まる(ガスボンベを持ち込み、キッチン以外の場所で料理する人がいるので)ことから、上海では表向きにはルームシェアが認められていないはずなんですが、我が家のあるマンションの1階は又貸しで2つの家庭が同居しています。

 

なんでそれを知ったかというと、お義母さんの知り合いが、娘さんが1階で個人指導を受けるついでに我が家に顔を出しに来たからです。

知り合い曰く、娘さんが元々通ってた学習塾が経営難で閉鎖寸前、でも今学期分の授業料は支払い済み、その後先生と相談して1対1の個別指導を先生の家で受けることで話がついて、これから毎週土曜の夜に送り迎えするとのことでした。

 

その話のついでに、塾規制のせいで複数抱えてる習い事の時間のやりくりが大変だとか、個別指導は2時間800元だとか、先生の家にはもう1家族住んでるとか、こちらが聞いてもないのにベラベラ話すので、自然と知ってしまったというワケ。

1階の人、最近引っ越してきたばっかりの人なんですけど、知り合いの話では先生たちは収入減で大変、ルームシェアするのも仕方がない、でもこの先生はいい先生だからしばらく個別指導をお願いするつもりだと言ってました。

 

中国には「上に政策あれば、下に対策あり」なんて言葉がありますけど、条件のある人はこうやって個別指導をお願いできるんだなぁと思い。

 

週に800元、月に2400元。

知り合いは国営企業で管理職をしてる人なので、そりゃ全然余裕でしょう。

 

でも我が家は、費用対効果を思うと考えちゃうんだよなー。。。

で、2人いるし、習い事はこれだけじゃないから、やっぱ出せないっていう結論に至っちゃう。

結局、こういうことの積み重ねで条件のある家庭とそうでない家庭の差がついていっちゃうんだよなぁと子どもに申し訳ない気持ちすら出てきてしまうのでした。

 

教育の質向上<優秀な人の数を抑えたい? 

中国では、中央を脅かしかねない企業や個人が出てくると、様々な手段を講じてその目を潰しにかかることがあります。

その典型はアリババのジャック・マーさんですかね、中央が特定の業界に対して規制強化することが度々あり、IT業界(ゲームも含め)、不動産業界、教育業界で次はどこ?って感じですが、最近「共同富裕」を打ち出している政府の「出た杭は徹底的に打つ」姿勢がすごく目立ってきていると感じます。

 

これは私の勝手な解釈ですが、今回の教育業界へのメッタ斬りは、単に教育熱を冷ますためとか子育て費用の軽減のためとか潤いすぎている業界の勢いを削ぐことが本質なのではなく、政府の真の目的は優秀な国民の数を抑えたいことにあるような気がしてなりません。

 

だって、国にとって国民が賢くなりすぎることは時に脅威になりかねないっていうのは、戦いの歴史を持った中国だったら身をもって知ってることでしょうし、優秀な人材は自分(政府機関関係党員)の子息だけで十分だと思ってるでしょうし、優秀な人材をたくさん作りだしても、その人材の受け皿が今の中国には全然足りないからです。

 

最近、中国では「内巻(化)」という言葉がよく聞かれるんですが、

 

大量の人民による小さな受け皿の奪い合い

過度な競争の長期化

競争に疲れた「寝そべり族(横たわり族)」の出現

競争過多から生まれる活力低下(内巻化)

国力低下(?)

 

という図式に乗っかているフシがあり、政府は「これはマズイ」と思ってるんじゃないかと。

 

製造業に人が来ない

なんでこんなことを書いてるかというと、私が勤めているのは製造業なんですが、ここ数年、新人の採用、特に一線で働くライン作業従事者の採用に苦労してるからです。

これはウチの会社に限ったことではなく、中国全土で製造業に優秀な人が集まりにくくなっている模様。

 

そりゃそうです、親も子も、数年に及ぶ熾烈な競争に勝ち抜いて大学にまで行ったのに、卒業後に現場のライン作業員になりたいか、させたいかって言ったら、そうなりたい(させたい)人なんていないですからね。

 

でも多くの人口を抱える中国のような国では、第一次産業や第二次産業の人材不足は致命的な問題を起こしかねず、それこそ国の存在がぐらつくほどインパクトが大きいことのように思うんです。(他国からしたら望むところかもだけど)

 

乱暴な書き方をすれば、少し頭の悪い国民がたくさんいた方が政府は人民をコントロールしやすいんじゃないかってことです。

 

え?考えが短絡で乱暴過ぎるですって!?

うーん、ちょっと変な方向に考えすぎかも知れませんけど、「習近平体制の崩壊」とかタイトルを打って大手メディアに寄稿している中国ウォッチャーさんほど大げさなことは言ってないと思うんですよね。

 

最後に

「双減」政策が今後どのように変化していくのかはまだ未知数なところがあります。

我が子たちは公立校に通っていることもあり、しばらくの間この政策の影響を受けることになるので、今後の動向がとても気になります。

 

また、これから小学生に上がる小さな子を持つ親も大変で、友人はこれだけ教育環境が一変すると、今後どうしていくのが良いのか判断がつかないと言ってました。

(中国では学校の選択と同時に不動産の買い替え需要なども発生するため)

 

これまでの中国は「持久力」に欠ける面があって、政府が出した政策が長続きしない、いつの間にか中身が変わっているなんてことが多々ありましたが、この政策がどれほどの強制力と持久力で維持されるのかも気になります。

 

引き続きこの政策の行方に注目していきたいと思っています。

また何かネタがあれば、こちらで紹介しますね。

 

今日は長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

では。

 

 

 

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  • この記事を書いた人

しゃんはいさくら

2004年~大連留学を経て、2005年~上海在住。 現在、夫、日中MIX子ども×2、義母の5人で生活してます。 会社でも家庭でも中国人に揉まれながら、のらりくらりとやってます。

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