日経小説『ふりさけ見れば』で唐の時代にタイムスリップ

上海生活あれこれ

 

こんにちは、しゃんはいさくらです。

 

上海のとある会社に勤務している私、日本人駐在員さんのご好意で日本経済新聞のアジア版を購読させて頂いています。

中国で仕事をする、投資をするにあたり、「経済」の視点から書かれた記事はどれも参考になり、毎日新聞を読むのを楽しみにしているのですが、なんだかんだ言って仕事を離れてホッと一息できる最終面が一番好き

最終面の目玉と言えば「私の履歴書」だと思いますが、その下の下にある小説も人気コンテンツの1つですよね。

小説は好みがあるので読んだり読まなかったりですが、7月下旬から始まった安部龍太郎さんの「ふりさけ見れば」がとっても面白いので、今日はそのご紹介です。

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作者は安部龍太郎さん

作家さんの人となりや背景を知ることは、小説を楽しむ上で大事な要素の1つになるんじゃないかと思います。

安部氏はご自身のホームページを持っており、そちらにプロフィールやこれまで執筆した作品が掲載されていました。

作家の安部龍太郎さん

※安部氏ホームページhttps://aberyutarou.com/より

 

著作一覧を見ると一目瞭然ですが、安部氏は日本史を大変得意とする作家さんです。

2013年に『等伯』で直木賞を受賞されていますが、安土桃山時代~江戸時代あたりの歴史小説が多い印象を受けました。

私は歴史小説をほとんど読まないので、実は今まで安部龍太郎さんを存じ上げず、今回の日経小説で初めて知りました。

 

ブクログで作品レビューを読んでみましたが、『等伯』はあっという間に読んでしまうほど物語に引き込まれる作品なのだそうですね。

これは『ふりさけ見れば』にも当てはまります。

小説欄の文字数に限りがあるせいもありますが、本当にあっという間で「えー?もう終わり?」という感じ。

最近は小説の楽しみがあるので、1日1日過ぎるのがとても早く感じます。

 

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『ふりさけ見れば』で描かれる世界

主人公は遣唐使として中国に渡った阿倍仲麻呂です。

 

阿倍仲麻呂は歴史の教科書に出てくるほどの有名な人物ですが、小説を楽しむには登場人物の背景を知っておくともっと興味深く読めると思うので、こちらで紹介します。

 

奈良県のホームページに書かれていた内容がシンプルで解りやすかったので引用させて頂きますね。

 

※奈良県ホームページより

http://www.pref.nara.jp/33486.htm 

  

物語の初期は遣唐使として唐にやって来た仲麻呂が現地に根を下ろして家族を持ち、その十数年後、日本へ帰国するかしないか葛藤する様子などが描かれています。

 

※日経ホームページより

  

仲麻呂の描写と共に読んでて興味がそそられるのは、当時の様子を描いた部分。

当たり前なのだけど、当時は電車もバスもなく、移動は馬車や船や徒歩など。

長安から蘇州まで片道1ヶ月もかかるなんて、想像を絶します。。。

 

また遣唐使十数年に一度の派遣で、次の遣唐使船が来ないと自分たちが帰ることもできず、時間のスケールが全然違っててそれもまた読んでて面白いなと。

 

今は何もかもが速すぎて、じっくりと考える時間を取ることすらしないし、できないですよね。

当時は時間が過ぎるのがゆっくりな分、しっかりと考えを巡らすことができて、それが現代にも繋がる宗教や文化を生んだりしたのかなぁと思いました。

 

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日中MIXファミリーを持つ一人として

どうして私がこの『ふりさけ見れば』に一目惚れしてしまったのか?

それは日本から中国にやって来た阿倍仲麻呂が現地で結婚して家族を持った人だったからです。

 

身分も役割も使命も全く被ってないですが、一応私も日本から中国にやって来て現地で結婚をした身なので、日中MIXファミリーの一員としてすごく興味をそそられたんです。

 

普段、夫婦喧嘩をしてふと「離婚」が頭をよぎった時に、子どもたちを連れて日本に帰ることが果たして現実的なのかと考えることがあるのですが、小説に出てくる細かい心理描写などがいちいち私のココロに突き刺さって、やっぱり今は我慢かなと思ったり、たぶん他の人はこんな読み方しないんだろうな。。。

 

アジア版9月14日付の第52回では、日本酒を味見した2人の息子の感想を聞く場面と仲麻呂の心理描写が書かれてるのですが、それを読んで自分を重ねてしまいました。

 

一部抜粋して引用します。

 

(日本酒を口に含んで)

・兄の翼が遠慮なく顔をしかめた。

・弟の翔は気を使ったようだが、自分の口には合わないと言うも同じだった。

その後仲麻呂は何かを確かめるべく、自分もお酒を口にします。

長安までの旅程で味が変わったのかもしれない。仲麻呂はそう思って口にふくんでみた。

変質しているどころか、かえって味わい深くなっている。それなのに二人の口には合わないのかと、仲麻呂は育った国のちがいを、今さらながら思い知らされた。

 

私は、子ども時代の体験はその人のアイデンティティ形成の重要部分で、大人になってから大きく変えられるモノではないと思っているのですが、中国育ちである我が子たちは、中国で培った経験がベースとなって(一部に日本の血が入っていても)今後永遠に「中国人」なんだと思うんですよね。

 

翼と翔の反応は、私が作るほうれん草のごま和えよりも義母が作るほうれん草炒めや中華スープの方が子どもたちが喜ぶのと同じ。

毎日の何気ないシーンに日中の狭間を感じることが思い起こされて、なんとも言えない気持ちになりました。

 

こういうことって意外とボディーブローのように効いてくるんですよ。。。

 

この後の物語がどう進んでいくのかは判りませんが、私はこれからも日中ファミリーとしての視点からこの小説を読んでいくのでしょう。

 

中国人を知るヒントになる!?

主人公の阿倍仲麻呂をはじめ、同じ時期に遣唐使としてやって来た人物に吉備真備がいるのですが、彼の叔父にあたる商人の石皓然をはじめ、仲麻呂たちを取り巻く人物たちの描写を見てると、日本人と中国人の違いが垣間見れるような気がして、とても興味がそそられます。

 

※日経ホームページ「ふりさけ見れば」副読本より

 

仲麻呂たちの周囲の人たちとのやりとりを読めば、中国人との交渉のヒントになるかも!?と思ったりして。。。

 

自分は中国に在住してて、日々中国人と過ごしてて、日本に住んでいる人たちよりは中国を理解しているはずなのだけど、小説を読んでると、安部さんが相当な取材と調査を重ねて書かれたと思える場面があって、小説家さんてホントすごいなと感心しています。

 

唐の時代も今の時代も、海を越えれば別世界。

これから仲麻呂を取り巻く日本と中国がどう描かれるのか、とても楽しみです♪

皆さまも是非。

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