国際相続を考える ~中国版相続法「継承法」のお勉強~

さくらの独り言

 

こんにちは、しゃんはいさくらです。 

先日「エンディングノートを書いてみた」と題し、万が一の時の為に引き継いでおきたい情報にはどんな内容があるのかをブログに書きました。

その際、我が家のように国際結婚で自分と配偶者(子ども)の国籍が違うケースにおいて、遺産相続がどうなるのかという疑問が残りました。

 

そこで今日はその疑問を解決すべく、日本と中国の相続に関するルールについて調べてみました。

各ご家庭で事情が異なるため皆さまの参考になるかは判りませんが、国際相続について考えるきっかけになれば幸いです。どうぞお付き合い下さいませ。

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日本人が中国で亡くなった場合の適用法

海を跨ぐ相続で注意が必要なのは、どの国の法律を適用するのかということです。

例えば私のように中国に在住している日本人が中国国内で亡くなった場合、日本と中国、どちらの法律を適用するのでしょうか?

 

中国の法律(渉外民事関係法律適用法 第三十二条)に照らし合わせると、

被相続人死亡時における経常的な居住地の法律を適用する

ことになりますので、私が中国で亡くなった場合、中国の相続法で遺産相続することになります。

 

ちなみに、日本では通則法という法律で、「相続は被相続人の本国法による」と規定されています。

なので、日本で亡くなった被相続人が外国人の場合(例:日本在住日中夫婦の中国人配偶者)、国籍のある国の法律に基づいて相続手続きが進められると解釈できます。

 

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中国の相続に関する法律は?

日本では民法の中で相続に関する基本ルールが定められており、その部分を相続法と言います。

中国では日本の相続法に相当するものとして「継承法」と呼ばれる法律があります。第一章の総則に始まり、合わせて五章、全三十七か条で構成されています。

なお、日本の相続法に150条ほどの条項があるのに対し、中国の継承法は37条しかありません。

 

調べていて知ったのですが、日本の相続法は2018年(平成30年)に、40年ぶりに大きく改正されたのだそうですね。

中国の継承法は1985年10月に施行されていて、こちらもかなりの年月を経ているのですが、これから変化があるのかどうか。

家族構成や人々の観念の変化などを踏まえ、改正される可能性は無きにしも非ずですよね。

 

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継承法が定める外国にある遺産の扱い及び外国人の相続について

国際相続に関わる中国のルールは、継承法第五章第三十六条の渉外継承で規定されています(継承法の後ろから2つ目の条項なので、お尻から読んだ方が早いです)。

日中夫婦にはとても大事な内容ですので、三十六条を全文掲載しますね。

 

第三十六条 涉外继承

中国公民继承在中华人民共和国境外的遗产或者继承在中华人民共和国境内的外国人的遗产,动产适用被继承人住所地法律,不动产适用不动产所在地法律。 外国人继承在中华人民共和国境内的遗产或者继承在中华人民共和国境外的中国公民的遗产,动产适用被继承人住所地法律,不动产适用不动产所在地法律。 中华人民共和国与外国订有条约、协定的,按照条约、协定办理。

 

第三十六条 渉外継承

中国公民が中華人民共和国外の遺産または中華人民共和国内の外国人の遺産を相続する場合は、動産は被相続人の住所地の法律を、不動産は不動産所在地の法律を適用する。外国人が中華人民共和国内の遺産または中華人民共和国外の中国公民の遺産を相続する場合は、動産は被相続人の住所地の法律を、不動産は不動産所在地の法律を適用する。中華人民共和国が外国と条約や協定を締結している場合は、その条約、協定に従って処置する。

※筆者訳

 

私を例に取ると、中国人と結婚して中国で生活している私が中国で亡くなった場合、私の動産は全て中国の法律に基づいて相続してもらうことになります(不動産は持っていないので割愛)。

つまり、エンディングノートを書いた時に相続の利便性から思いついた日本の金融資産は日本の家族へ、中国の金融資産は中国の家族へという考え方はやはり成立しないことになります。

 

今後、私の生活拠点がどう変わっていくかは判りませんし、分散投資という考え方もありますが、それほどの資産があるわけでもない私にとっては、そのあり方もシンプルにしておいた方が、残された人にとってはラクかなぁと思いました。

 

実際にコトが起こったら家族が専門家に相談するとは思いますが、どちらの国で亡くなっても、その時点で私がどこに住所をおいていたかによって適用する法律が変わってくることは理解できたので、エンディングノートにはそのように追記しておこうと思います。

 

中国継承法で規定されている相続の順番

適用法律が理解できたところで、中国の継承法についてもう少し踏み込んで勉強しておきたいと思います。 

 

第二章の法定継承の部分で、相続範囲や順序が定められています。

まず根底の原則として、男女平等が示されています(第九条)。

 

また相続人の範囲と順序(第十条)は、第一相続者が配偶者、子女、父母、第二相続者が兄弟姉妹、祖父母となります。

第一相続者が存命の場合は、第二相続者には相続されません。第一相続者が誰もいない場合に限り、第二相続者に相続されることになるようです。

 

またここでいう子女、父母の定義には扶養関係にある義理の子女、父母も含まれます。戸籍や血縁に関わらず、扶養関係にあるかどうか(生計を一緒にしているか)が問われるようです。

 

中国継承法で規定されている相続の配分

同一順序内の相続人の配分は基本的に均等です(第十三条)。

但し、条件によっては多くもらえたり少なくもらえたりします。

例えば、同一順序にいる相続人(たち)と被相続人が同居していたかどうか、扶養関係にあったかどうかなどです。

この部分、明確な配分比率が規定されておらず、「多い」「少ない」としか書かれていないのが気になりました。

 

ここで当初、私が解釈に迷ったのは配偶者の遺産相続についてです。

 

第四章の遺産の処理という項目の中で別途規定があるのですが、そこを読むと夫婦が婚姻関係期間中に所得した全ての共有財産は、まずは半分が配偶者分として分割された後に、その残りが被相続人の遺産として処理される、とあるんですよね(第二十六条)。

一方で、第十三条には同一順序の配分は基本的に均等だとあるので、第一相続者である配偶者、子女、父母には均等に配分されることになります。

となると、例えば夫の遺産が100万円だったとして、半分の50万円が配偶者である妻に分割された後、残りの50万円を配分するときに、妻はその配分を受け取れるのかどうか?

 

この件について更に調べてみたところ、百度でこのような資料を見つけました。

 

※百度よりお借り

中国の法律では、財産の分割と遺産の配分は分けて考えられているようで、妻はどちらも受け取れることになっていました。

※財産が分割されるのは夫婦の共同財産部分に限り、結婚前などの個人の財産は遺産として均等配分されます。

 

ちなみに、日本の場合は、第九百条の法定相続分の欄で規定されていて、このような分け方となります。

※So-net検索結果よりお借り

 

我が家の不動産の扱い

先ほど私は不動産を持っていないと書きましたが、厳密に言うと中国の不動産には私の持分があります。

中国の法律では、婚姻継続期間中に取得した資産は共有財産となり、均等に持分があることになっているので、私の資産としてカウントできるのです。

但し、不動産権利証の中には私の名前は入っていないので、エンディングノートには不動産に関する引き継ぎ事項はないものとして何も書きませんでした。

上海の不動産は旦那が先立てば私が相続することになるんでしょうけど、私が先の場合は特に行動することがないので。。。

 

こうして整理してみると、簡単なようで複雑?複雑なように見えて実は簡単?

なんだか、解ったような解らないような。。。

 

遺言に関する規定

継承法の第三章に遺言に関する規定が書かれています。

書面で残す場合、遺言書は直筆で内容が記されていること、署名、年月日が書かれていること、公証局で2人以上の立ち会い人が現場で立ち会いし、そのうちの1人が代書し、代書者、立会人、遺言書を書いた本人の署名を行うことになっています。

録音式の遺言も作ることができ、2人以上の立ち会い人が必要です。

このほかにも遺言に関わる条項はありますが、ここでは割愛します。

 

中国の継承法では、労働能力を含む生活能力の有無、扶養関係の有無が相続に強く影響するような印象を受けました。

 

遺産の処理について

日中夫婦に関わる大事な部分は上で既に紹介しましたが、もう少し第四章 遺産の処理について見ていきます。

まずは、被相続人が死亡した場合、それを知った相続人は他の相続人に知らせる必要があります。伝えられる人がいない場合は、被相続人が所属していた事業所や居民委員会が通知することになっています。

 

また、「遺産」と聞くとまとまったお金が自分の元に入ってくるイメージが拭えませんが、そうとも限らないのがこの問題の難しさ。

 

例えば、「負」の遺産があったらどうするのか?

中国でも継承法で「相続放棄を宣言することができる」と定められています。

細かくは触れませんが、

被相続人に税金未納や債務があった場合は遺産の実価値を上限として返済する

とか、

相続人が相続を放棄した場合は被相続人の未納分税金の納付責任は追わなくて良い

などの条項がありました。

自分はそんな債務を残さないようにしたいですし、家族にも負の遺産を残されないようにしてもらいたいですね。

 

ところで、相続放棄と書いてふと思い出しましたが、以前、友人情報で、中国では贈与や相続に関わる税金が発生しないと聞いたような記憶が。

 

 

ついでなので調べてみたら、2019年に遺産税の暫定条例(草案)が出されていました。

 

応征税という名目で遺産総額の0.5%を徴収するが、最高で5,000元を超えないとのこと。

また不動産については、名義変更の際に、営業税、所得税、不動産取得税(法定相続人の場合は免税)、その他事務手続き費用などが発生する模様。

 

事例の紹介では100万元の不動産の名義変更をする場合の税金や手続きにかかる費用が諸々含めて2万5千元くらいになると書かれていました。

それを節約する為に不動産を取得する時に子どもの名前を入れておく人がいるんだそうです。

ほぉ、なるほどね。。。

 

贈与や相続に関しては、中国の方がかかる税金、費用が少なさそうに思いました。

 

まとめ

以上、中国版相続法の「継承法」について、日中国際結婚夫婦に関係する項目を中心に紹介しましたが、いかがでしたか?

私はこの道の専門家ではないので考えが及んでいない面も多々あるかと思いますが、何かの参考にはなるのではないかと思い、こうして記事にまとめてみました。

 

もし私の認識に間違いがありましたら、是非ご指摘下さい。

 

また、この記事はあくまでも参考であり、皆さまの国際相続の依拠にはなりません。

最終的な判断は専門家に委ねられますよう、お願いいたします。

 

今日もお読み下さり、ありがとうございました!

 

 

相続のこと、終活を考える前に、まずはお金の勉強をしておくのも大事です。

 

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