中国・所得税法改正による基礎控除額及び税率の変化について

お仕事あれこれ

皆さん、こんにちは!10月の給与はもう支給されましたか?

先般開催された第十三期全国人民代表大会常務委員会第5回会議での『「中国人民共和国個人所得税法」の修正に関する決定』を受け、2018年10月1日から新しい所得税率表に基づいた所得税が徴収されています。

今日は旧制度と新制度の変更点と、手取り額がどれくらい変わるのかを計算してみました。

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※2019年1月追記

2019年1月の本施行以降は更に税金の計算方法が変わっています。

詳しくは個人所得税の計算方法変更についてをご覧下さい。

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個人所得税税率は外国人にも適用

今回の税法修正は外国籍職員にも適用されてまして、おかげさまで私も手取り額がUPしました。

これまで外国人の個人所得税は会社を通じて納めている場合、

所得税額={(税前給与-基礎控除4800元(※)-表1に基づく速算控除額)÷(1-小数点化した表1に基づく税率)}×適用税率-速算控除額

で計算されていましたが、今回の修正を通じて

・基礎控除 4800元→5000元に変更

・速算控除額と税率適用額が変更(表1→表2)

・計算方法が所得税額=(税前給与-基礎控除5000元(※))×適用税率-速算控除額に統一

されました(旧制度では個人納税と会社納税で計算方法が異なっていました)。

※中国の社会保険に加入している場合は、税前給与-基礎控除-社会保険控除となります。

参考)新旧税率表

表1 旧制度税率表

表2 新制度税率表

ちなみに外国人の基礎控除額調整幅は200元と小さな額ですが、中国人の基礎控除額は3500元→5000元に調整されており、その差が1500元あります。

税率表については階層の分け方や適用税率がこれまでと大きく変わり、これまでひと括りにされていた9,000~35,000元クラスの階層が、より今の時代に適した分け方になっています。

では、実際の手取り額はどれくらいの変化になるのか、複数のケースで計算してみました。

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旧制度vs新制度 手取り額はこれだけ増える

①税前給与が15,000元の場合

旧制度の場合

給与15,000-基礎控除額4,800=10,200 適用する税率は25%、速算控除額は1,005元。

個人納税方式で計算すると所得税額は1,545元になります。

給与15,000から納税額を引いた手取り給与は13,455元でした。給与の1割が税金で引かれていたことになります。

新制度の場合

給与15,000-基礎控除額5,000=10,000 適用する税率は10%、10,000元の10%は1,000元。 この金額から速算控除額である210元を引くと、納税額は790元になります。

給与15,000から納税額790元を引いて、手取り給与は14,210元になりました。新制度によって手取り額が755元/月増えたことになります。対給与税率は約5%になりました。

②税前給与が30,000元の場合

旧制度の場合

給与30,000-基礎控除額4,800=25,200 適用する税率は25%、速算控除額は1,005元。

同じく計算式に当てはめると所得税額は5,295元です。

給与30,000から納税額を引いた手取り給与は24,705元でした(対給与税率17.65%)。

新制度の場合

給与30,000-基礎控除額5,000=25,000 適用する税率は20%、25,000元の20%は5,000元。 この金額から速算控除額である1,410元を引くと、納税額は3,590元となります。

給与30,000から納税額3,590元を引いて、手取り給与は26,410元になりました。その差1,705元です。対給与税率は12%に下がりました

③税前給与が50,000元の場合

旧制度の場合

給与50,000-基礎控除額4,800=45,200 適用する税率は30%、速算控除額は2,755元。

同じく計算式に当てはめると所得税額は10,805元です。

給与50,000から納税額を引いた手取り給与は39,195元でした(対給与税率21.61%)。

新制度の場合

給与50,000-基礎控除額5,000=45,000 適用する税率は30%、45,000元の30%は13,500元。

適用税率は変わりませんが、速算控除額が旧制度より増えて4,410元となっていますので、納税額は9,090元となります。

給与50,000元から納税額9,090元を引いて、手取り額は40,910元になりました。差額は1,715元で、大きな減税だということがわかりますね。対給与税率は18.18%になりました。

今回改正で一番評価したいこと

以前の税率表と比較して、公平性が向上したことを個人的にとても評価しています。

なぜかと言うと、以前の税率表の場合、階層の変わり目にあたる給与だった場合、支給額が少ない人の方が納税額が高くなってしまう現象があったからです。

例えば、支給額が8,900元の人と9,000元の人で比較すると、

8,900元の人(適用税率10%、速算控除額105元)の納税額は305元なのに対し、

9,000元の人(適用税率20%、速算控除額555元)は285元でした。

また、支給額が12,555元の人と12,556元の人で比べると、

12,555元の人(適用税率20%、速算控除額555元)の納税額は996元なのに対し、

12,556元の人(適用税率25%、速算控除額1,005元)の納税額は934元と、

支給額はたった1元の差しかないのに、納税額に63元もの差が出ていたのです。

適用税率と速算控除額が不合理な制度だったんですね。

しかし、今回の新制度ではこの不公平が是正されています。

例えば、16,999元の人と17,000元の人で比較すると、

16,999元の人(適用税率10%、速算控除額210元)の納税額は989.9元なのに対し、

17,000元の人(適用税率20%、速算控除額1,410元)の納税額は990元と極めて小さな差額になっています。納める側も、これなら納得できますね。

なお、税率表の金額が、「超過3,000元~12,000元的部分/超過12,000元~25,000元的部分」と書かれていますが、具体的には「3,000.01元以上12,000.00元以下/12,000.01以上25,000.00元以下」と理解するとわかりやすいと思います。

超過12,000元を12,000元以上とすると日本語的には12,000.00元も含まれてしまうので、誤解を招きやすいです。

新旧税率表を日本語にしたものと、変更箇所を示してみましたのでご参考ください。

以上、18年10月に先行施行されている個人所得税の徴収額変更についてのお話でした。

この新税法は2019年1月に本施行されることになっています。今後は子女教育費や高額医療費、住宅賃料などといったこれまで外国人にのみ認められていた優遇項目が中国人にも適用される見通しで、更なる減税が見込めるかも知れませんが、実際はどうなることやら!?

また新しい情報があり次第、こちらで紹介したいと思います。

では!


追記

2019年1月、本施行後の情報はこちらからどうぞ↓

【中国・所得税法改正】所得税付加控除と情報登録について

【中国・所得税法改正】個人所得税の計算方法変更について

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